観察日記でおなじみの朝顔。
早起きした夏の朝、ふと見つけたこの花に小学校時代を思い出して懐かしくなる……そんな方も多いかと思います。
この夏休み、今度はお子さんが朝顔の観察に張り切っていたりして。
そしてお子さんはある朝こう問いかけてくるのです。
「昼顔や夕顔はあるの?」
「夜顔は?」
「朝顔との違いは何?」
大人でも即答できない難問を、好奇心にあふれた純粋な眼差しで……!
ここでは四種類の違いと見分け方をまとめましたので、難問を乗り切るヒントとしてぜひお役立てください。
朝顔と昼顔の違いは?
初夏から夏にかけて花開く四つの「顔」。
名前も姿もそっくりですが、よ~く見るとそれぞれ個性的なところも。
まずは朝顔と昼顔の違いから見ていきましょう。
朝顔と昼顔の違い
- 咲く時間帯……早朝から昼前
- 花の色……青、青紫、ピンク、白
- 花の大きさ……約10~20cm
- 曜……個体差あり
- 葉……M字
- 咲く時間帯……早朝から夕方
- 花の色……白、ピンク
- 花の大きさ……約5cm
- 曜……5本
- 葉……ほこ形
(1)咲く時間帯
昼前には花が閉じてしまう朝顔に対して、昼顔は夕方まで咲き続けます。
早朝に咲くのは同じでも、咲いている時間の長さが違うんですね。
(2)花の大きさ
朝顔は最小でも10cmと大ぶりですが、昼顔は5cmと小ぶり。
(3)曜の数
花の中心から放射状に伸びた筋を曜(よう)と言います。
朝顔はこの本数がまちまちなのに対して、昼顔は必ず5本あるのが特徴です。
(4)葉の形
ぶどうのような可愛らしい朝顔の葉と、ほこのように両辺の長いユニークな昼顔の葉を見比べるのも面白いですよ。
どちらもろうと形の可愛らしい花を咲かせる朝顔と昼顔に、こんなに違いがあるなんて意外ですね。
夕顔と夜顔の違いは?
次は夕顔と夜顔の違いを比べてみましょう。
実はこの二つを見分けるのはとても簡単!
花びらの形を見ればすぐにどちらか分かっちゃうんです。
夕顔と夜顔の違い
- 咲く時間帯……夕方から翌日の昼前
- 花の色……白
- 花の大きさ……約5cm
- 曜……なし
- 花びら……分かれている
- 葉……平たい円形
- 咲く時間帯……夕方から翌日の早朝
- 花の色……白、赤
- 花の大きさ……白約15cm、赤約5cm
- 曜……個体差あり
- 花びら……ろうと状につながっている
- 葉……スペード形
(1)咲く時間帯
夕顔は夕方から咲き始め昼まで咲き続ける息の長い花。
夜顔も夕方から咲き始めますが、早朝には閉じてしまう一夜限りの花です。
(2)花の大きさ
同じ白い花でも夜顔は15cmと大ぶり。
また夜顔には赤花夜顔もあり、こちらは逆に夕顔より小さく5cmほどの薄紫色の花を咲かせます。
(3)花びらの形
いちばん違うのが花びらの形。
夕顔の花びらは一枚ずつ分かれていてフリルみたいにしわしわ。
朝顔というよりかぼちゃにそっくりです。
そして夜顔の花は朝顔や昼顔と同じろうと状。
同じ「顔」と付く仲間なのに、花びらの形が違うそのわけは……
夕顔が「ウリ」だから。
朝顔・昼顔・夜顔がヒルガオ科なのに対して、夕顔はひょうたんのなるウリ科。
そう実は夕顔だけ仲間外れだったのです……まさかのみにくいアヒルの子展開!
(4)曜
夜顔には5本前後の曜がみられますが、夕顔には曜そのものがありません。
(5)葉
夕顔の葉はハスに似た平たい円形。
夜顔の葉は丸っこいスペード形になっています。
花だけ見るとピンとこないかもしれませんが、食材としての「夕顔」なら食卓でもおなじみですね。
とろける食感が美味しい夕顔の調理前の姿は、そういえばまさにウリ。
朝顔、昼顔、夕顔、夜顔の見分け方
これで近い時間帯の「顔」同士の違いが分かりました。
よく見ると個性的とはいえごっちゃになりますよね!?
そこで四種類をポイント別にまとめてみました。
ここをチェック!四種類の見分けポイント
- 朝顔……早朝から昼前
- 昼顔……早朝から夕方
- 夕顔……夕方から翌日昼前
- 夜顔……夕方から翌日早朝
- 朝顔……約10~20cm
- 昼顔……約5cmで曜が必ず5本
- 夕顔……約5cmでしわがある
- 夜顔……約15cm(赤約5cm)
- 朝顔……M字形の葉
- 昼顔……ほこ形の葉
- 夕顔……平たい円形の葉
- 夜顔……スペード形の葉
現在では品種改良が進み、咲く時間帯だけでは見分けがつかないことも。
そんな時は、時間帯→花の大きさ・曜・形→葉の形の順番でチェックしてみてくださいね。
国も歴史も違う。四つの美しい「顔」
四種類の「顔」にはもうひとつ、花の見た目では分からない大きな違いがあるのをご存知でしょうか?
それは原産国と歴史。
花の色合いや可憐さからてっきり全部日本の花かと思っていたのですが、調べてみるとそれぞれ遠い国から来ていたのです。
(1)朝顔
青やピンクが鮮やかな朝顔は熱帯アジア原産。
奈良時代に遣唐使が持ち帰り、薬として利用されていましたが、江戸時代に品種改良が進むと観賞用として愛でられるようになりました。
新種は高値で取り引きされたため、朝顔の栽培は武士の内職としても人気があったそうですよ。
(2)昼顔
昼顔は日本やヨーロッパで生まれた花。
地面の下に茎を伸ばして増えていくため取り除くのが難しく、花は可憐でも雑草として扱われています。
日中の暑い盛りに咲き誇るたくましさの源が伺えますね。
(3)夕顔
夕顔の原産は何とインド。
ウリの中でも苦味の少ない品種が選り分けられて伝わったとされています。
いつどうやって日本に入ってきたのかは分かっていませんが、「朝顔に似てるけど夕顔の実は不恰好!」と清少納言が枕草子で触れていることから、平安時代にはすでに日本に渡っていたようです。
(4)夜顔
闇夜に浮かぶ白い花が妖艶な夜顔は熱帯アメリカ生まれ。
明治の初め頃に日本に渡来し、観賞用として栽培されてきました。
どこかミステリアスであでやかな香りも特徴のひとつです。
遠い国からはるばる渡ってきた花たちが、日本では姉妹のように似た名前で親しまれているなんて不思議ですよね。
まとめ
- 朝顔……早朝から昼前/花約10~20cm /M字形の葉
- 昼顔……早朝から夕方/花約5cmで曜が5本/ほこ形の葉
- 夕顔……夕方から翌日昼前/花約5cmでしわがある/平たく円形の葉
- 夜顔……夕方から翌日早朝/花約15cm(赤約5cm)/スペード形の葉
- 夕顔はウリ科
名前のよく似た四種類の「顔」も比べてみると結構違いがありましたね。
そして夕顔……みにくいあひるの子だと美しい白鳥になるのに、清少納言に「不恰好」とばっさり斬られる夕顔。
ちょっと夕顔に厳しすぎないでしょうか清少納言。
食べると美味しいよ!
今回は四つの「顔」についてお話してきました。
ポイントごとに確認していけば見分けるのも簡単なので、この夏は難問にさらっと答えてお子さんの尊敬の眼差しをゲットしてくださいね。